上生菓子『水風船』

上生菓子水風船 上生菓子

こんにちは、和菓子屋のあんまです。

夏の祭りの記憶を呼び覚ます、上生菓子『水風船』

日が落ち、空が紺色に染まる頃、どこからともなく聞こえてくるお囃子の音。 夜店が立ち並び、提灯の明かりがぼんやりと辺りを照らします。 そんな、誰もが心に持つ夏の祭りの記憶を呼び覚ますような上生菓子を作りました。

その名は、『水風船』

写真の上生菓子は、まるで小さな風船のようです。 淡いピンクと水色が、グラデーションをなしており、夏祭りの賑やかさの中にひそむ、どこか幻想的な雰囲気を醸し出しています。

その上部には、まるで本物の水風船の口を縛るかのように、黄色の紐が結ばれています。 紐の結び目の上には、風船の口の部分が出ており、より水風船感を醸し出しています。

添えられた札には、「練切・黄味あん」と書かれています。 前回の『団扇』と同様、このお菓子も練り切り製で、中にはまろやかな黄身餡が詰まっています。 練り切りのしっとりとした口当たりと、黄身餡の上品な甘さが、口の中で溶け合います。 祭りのお菓子らしく、童心に帰ったような、わくわくする気持ちにさせてくれる甘さです。

この『水風船』を前にすると、まるで子どもの頃に戻ったような気分になります。 夜店で水風船をすくおうとした時の、あの胸の高鳴り。 うまく掬えた時の喜び、そして、持ち帰る途中で割ってしまった時の、ほのかな寂しさ。 そんな懐かしい記憶が、じんわりと蘇ってきます。

この和菓子を、冷たい緑茶やほうじ茶とともにゆっくりと味わうのはいかがでしょうか。 夏の夜の静かなひとときに、一人、この小さな『水風船』を眺め、口に運ぶ。 それは、過ぎ去った夏の日々を慈しむ、何とも贅沢な時間です。 一瞬の美を形にする職人の技と、日本の四季を大切にする心が詰まった『水風船』は、見る人、食べる人の心を、遠い夏の記憶へと誘ってくれます。


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