こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は、上生菓子『鬼灯(ほおずき)』。
夏の終わりを灯す、手作りの赤い提灯 上生菓子『鬼灯』の作り方
夏の賑やかなお祭り気分が続く中、夜風に少し涼しさが混ざり始める頃。お盆の時期が来れば、鬼灯(ほおずき)の季節がやってきます!
あの朱色の丸い提灯がコロンと下がっている姿を見ると、なんだか心が温まりますよね。古くからお盆に先祖の霊を迎えるための提灯とも言われる鬼灯。その優しくて奥ゆかしい姿を、今回は上生菓子の練切で表現してみました!
練切で再現する「提灯」のふっくら感
鬼灯の形って、本当に可愛いんですよね。中が空洞の袋状になっていて、光を通すと透けて見える。この「ふっくらとした提灯」の雰囲気を練り切りで出すのが、今回のこだわりポイントでした。
まず、鮮やかな朱色と橙色の中間くらいの色に練り切りを染めます。この色付けがとっても大事!ただの赤ではなく、夏の太陽を浴びて、少し日焼けしたような温かみのある色を目指しました。
次に、その色をグラデーションになるように丁寧に練り合わせます。鬼灯のてっぺんを少し濃い色にして、下にいくほど明るくなるようにすると、より立体感が出て、光が当たっているように見えるんです。
そして、形作り。練切で、中餡を優しく包んだら、ここからはヘラの出番です。
鬼灯の皮にある筋(葉脈)のような模様を、専用のヘラで一本一本、丁寧に付けていきます。この筋があることで、のっぺりとした丸い形に生命力が宿り、「あ、本物の鬼灯だ!」って思えるリアリティが出ます。
中には夏の夜の色、『黒あん』を包んで
今回の『鬼灯』には、中の餡に黒あんを使いました。
鬼灯の温かい朱色の練り切りと、中の黒あんの色のコントラストが、まるで夏の夜空にポッと灯る提灯みたいで素敵なんです。黒あんのもつ、素朴で深みのある甘さが、外側の華やかさを支えてくれるんです。
練り切りは、口に入れるとスッと溶けてしまうくらい繊細です。その後に、この黒あんのコクがじんわりと広がるのがたまりません。暑い時期でも重すぎず、すっきりとした甘さに仕上げました。
てっぺんには、乾燥させたヘタをそっとつけて、本当に枝から採ってきたような風情を出してみました。この小さなひと手間が、お菓子を格上げしてくれるんですよね。

『鬼灯』と過ごす、夏の終わりの静かな時間
鬼灯って、夏の賑やかさが去った後の、静かな日本の風情を感じさせてくれる植物です。
自分で作ったこの『鬼灯』を、いつものお気に入りの陶器のお皿に載せて、氷を入れすぎないぬるめの冷茶と一緒にいただく。
夏の思い出を振り返りながら、この愛らしい朱色の提灯を眺めていると、心がスーッと落ち着いていくのを感じます。
お菓子作りを通して、季節の移ろいをこんな風に感じられるのは、本当に豊かな「ひととき」です。皆さんも、この時期にしか出会えない上生菓子で、夏の終わりの小さな感動を味わってみてくださいね。