こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『白菊』を作りました。
高潔な美しさを纏う姿 上生菓子『白菊』の澄んだ香り
秋の景色が深まり、他の花が少しずつ姿を消していく中でも、凛として咲き続けるのが菊の花です。菊は、その美しい形と香り、そして長寿の象徴として、古くから私たち日本人にとって特別な存在です。
特に、白菊（しらぎく）は、その名の通り純白の衣を纏ったような姿が、清らかで高潔な印象を与えます。まるで、秋の澄み切った空気をそのまま閉じ込めたような、静謐な美しさを持っています。
今回は、そんな白菊の持つ、揺るぎない気品を、上生菓子の練切で表現してみました！
菓名は、もちろん『白菊（しらぎく）』です。
練切で再現する「清らかな白」と「細やかな花弁」
この『白菊』は、練切を使い押し棒で押して花びらを表現しました。
まず、一番こだわったのは、色の出し方です。白の練切の裏に黄色の練切を少しさすことによって、ただの白い菊ではなく、黄色のしべが淡く表現しました。
この白さが、白菊特有の清らかさと、冷たい秋の朝露を含んだような瑞々しさを表現してくれています。
そして、外側に向かって幾重にも重なる、細やかな花弁の形です。
押し棒で不規則に押していくことで、複雑な花弁の重なりが、菊の持つ「豪華さ」と、「格式の高さ」を感じさせてくれます。
中心には、白菊の気品をさらに高めるために、金箔をそっと乗せました。この金箔はしべを表現するためにつけています。また、小さな黄金の輝きが、高貴なアクセントになっています。
黄味あんの「優しさ」が、清らかな味わいを包み込む
菓名札にある通り、この『白菊』の中身は黄味あんを使いました。
白菊の持つ清らかなイメージを邪魔しないよう、黄味あんの持つまろやかで優しい甘さを選びました。この餡は、口溶けが良く、さっぱりとしているので、練切の清涼感をさらに引き立ててくれます。
練切のもっちりとした質感と、黄味あんの上品なコクが合わさり、まるで清らかな水をいただくような、静かで奥ゆかしい味わいに仕上げています。
格式ある静けさを楽しむ「ひととき」
菊は、日本において皇室の紋章にも使われる、非常に格式の高い花です。
この『白菊』をいただくときは、ぜひ、温かいお抹茶や、玉露のような上質な煎茶など、格調高いお茶と合わせてみてください。この完璧な白菊を前に、日々の喧騒を忘れ、静かに自分と向き合う。
皆さんも、この『白菊』で、心身が洗われるような、贅沢な「ひととき」を過ごしてください。
