こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『里時雨』を作りました。
🍂 秋の里山を濡らす涙雨 上生菓子『里時雨』に聞く静かな音色
秋が深まり、しんとした寒さが身に染みる頃。日本らしい情緒ある気象現象といえば、時雨(しぐれ)がありますよね。
ザーッと降ってはサッと止む、通り雨のこと。特に、晩秋から初冬にかけて、里山に降る時雨は、季節の移ろいの速さと少しのわびしさを感じさせてくれます。
里山に時雨が降ると、色づいていた葉も散り始め、景色は淡く、静かな色調へと変わっていきます。そんな秋の里の静かな情景を、上生菓子の練切で表現してみました。
菓名は、里の情景と時雨を組み合わせた『里時雨(さとしぐれ)』です。
練切で描く「雨の螺旋」と「里の紅葉」
この『里時雨』は、練切を使った「ぼかし」と「型起こし」の技法で、その静かで奥ゆかしい姿を表現しました。
白い練切の裏に濃い色の茶色と水色をさしています。
茶色は里の風情を、水色は雨(時雨)をイメージした色になります。
色を濃くしたのは裏からぼけて表に出るときに色が認識されるようになっています。
お菓子表面の渦は型起こしで打ち付けて模様付けしています。
この模様は水を表しており、菓名の『里時雨』を表すにはぴったりの模様となっています。
そして、この寂しげな風景の中で、まだ残っている秋を表すために、黄色いイチョウの葉を一つ、そっと乗せました。この散り残った一枚の葉が、秋の終わりと、わずかな温かさを添えてくれます。
この葉っぱがあることで、里の静かな景色に、一瞬の光が差し込んでいるように見えるでしょうか。

黄味あんの「まろやかさ」が、里の優しさを伝える
菓名札にある通り、この『里時雨』の中身は黄味あんを使いました。
このわびしい情景に対して、黄味あんの持つまろやかで優しい甘さは、雨宿りをする里の軒先のような、温かい安らぎを与えてくれます。見た目は静かですが、一口食べると秋の恵みと、じんわりとした優しさが広がるように工夫したんですよ。
練切のしっとりとした口溶けと、黄味あんの包み込むような甘さが合わさって、里の穏やかな時間を象徴するような、心安らぐ味わいになっています。
静かに移りゆく季節を愛でる「ひととき」
里時雨が降るたびに、季節は一歩ずつ冬へと進んでいきます。この時雨の時期は、自然の移り変わりを肌で感じられる、大切な季節の節目です。
この『里時雨』をいただくときは、ぜひ、温かいほうじ茶や、少し熱めの煎茶など、温もりのあるお茶と合わせてみてください。この静かな和菓子を眺めながら、雨音に耳を澄まし、季節の静かな変化を慈しむ。
皆さんも、この『里時雨』で、心穏やかな、里の情緒に浸る「ひととき」を過ごしてくださいね。
