日本の五節句、「人日の節句」について調べてみた!

初日の出 時候あれこれ

こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は日本の五節句のひとつ、「人日(じんじつ)の節句」について詳しく調べてみました。
私自身も知らないことが多く勉強になりましたのでぜひお読みくださいませ。


一、「人日の節句」の由来 ― なぜ「人の日」なのか

「人日(じんじつ)」という言葉には、文字通り「人の日」という意味があります。この行事のルーツは、古代中国の占いの風習にまで遡ります。

古代中国では、元日から6日目まで、身近な動物を当てはめてその日の運勢を占う習慣がありました。

  • 1月1日:鶏(とり)
  • 1月2日:狗(いぬ)
  • 1月3日:羊(ひつじ)
  • 1月4日:猪(いのしし)
  • 1月5日:牛(うし)
  • 1月6日:馬(うま)

そして、満を持して7日目に「人」を占いました。
この日は「人の日」として、犯罪者に対する刑罰を行わない、あるいは人を敬い大切にする日と定められたのです。

この「人を大切にする日」に、7種類の若菜を入れた温かいスープ(七種菜羹/ななしゅさいかん)を飲み、一年の無病息災を願った文化が日本に伝わりました。
それが日本の古来からの「若菜摘み」の習慣と融合し、平安時代には宮中行事となり、江戸時代には「五節句」の一つとして庶民の間にも広まっていったのです。


二、七草に込められた「生命の力」

南砺市のこの時期は雪で銀世界になることが多々あります。アスファルトも田んぼも雪に覆われるこの地では、冬に「青い草」を見ることはできない日もあります。
物流が発達していなかった時代、雪の下から芽吹く若菜を探し出すことは、春の息吹、つまり「再生する生命力」を体内に取り込む神聖な儀式だったに違いありません。

お馴染みの「春の七草」には、それぞれに深い意味と効能が込められています。

  1. 芹(せり):競り勝つ。水辺で競い合って生えることから。
  2. 薺(なずな):撫でて汚れを払う。別名「ペンペン草」。
  3. 御形(ごぎょう):仏の体。母子草(ははこぐさ)のこと。
  4. 繁縷(はこべら):反映がはびこる。
  5. 仏の座(ほとけのざ):仏が安座する。※現在のタビラコ。
  6. 菘(すずな):神を呼ぶ鈴。蕪(かぶ)のこと。
  7. 蘿蔔(すずしろ):汚れのない清白。大根のこと。

これらの草花は、現代の栄養学で見ても非常に理に適っています。お正月のご馳走で疲れた胃腸を整え、ビタミンが不足しがちな冬の体に活力を与えてくれるそうです。


ここまでは五節句のひとつ、「人日の節句」についての詳しく調べてきましたが、
・そもそも1月1日の元旦が節句ではないの?
・元旦と人日の節句の違いはなに?

と疑問に思いましたのでそちらも少し。

三、元旦と人日の節句、3つの大きな違い

一言でいうと、元旦は「神様をお迎えする最高位の日」であり、人日の節句は「人間が自分たちの無病息災を願い、正月を締めくくる日」だそうです。

1. 役割の違い:神様のための日 vs 人間のための日

  • 元旦(1月1日): 新年の神様である「歳神様(としがみさま)」を家にお迎えする、一年で最も神聖な日です。すべてが新しくなる「始まり」を祝う、別格の行事です。
  • 人日の節句(1月7日): 文字通り「人の日」の節句です。古代中国の占いで1月7日を「人の運勢を占う日」としたことに由来し、この日は人を大切にし、自分たちの健康を祈り、お正月を無事に過ごせたことに感謝する、人間主体の行事です。

2. 食文化の違い:祝宴のご馳走 vs 胃を休める養生食

  • 元旦(おせち・お雑煮): 歳神様へのお供え物でもあり、家族の繁栄を願う「縁起物」を詰め込んだ豪華なお料理をいただきます。南砺でも、お餅や具だくさんのお雑煮で華やかに祝います。
  • 人日の節句(七草がゆ): ご馳走が続いたお正月の胃腸をいたわる「養生(ようじょう)」の意味が強くなります。青々とした七草の生命力を取り入れ、一年の健康を願う、体に優しい食事です。

3. 和菓子の違い:伝統の意匠 vs 春の予感

  • 元旦の和菓子: 「花びら餅」や「鏡餅」、その年の「干支」など、格式と縁起を重んじた意匠が中心です。
  • 人日の和菓子: 「雪間草(ゆきまぐさ)」や「若菜」など、雪の中から芽吹く緑を表現した、春の訪れ(希望)を感じさせる意匠が多くなります。

当店でも「花びら餅」や「鏡餅」は作りますが、人日の節句にちなんだお菓子は作っていないのでこれから作っていくことも考えていきたいですね!


四、和菓子とお茶で過ごす「ひととき」の提案

人日の節句、1月7日の午後は、ぜひご自宅で「自分を労う茶の時間」を設けてみてください。

【お花:春を告げる香り】

この時期、家の中で楽しむなら「蝋梅(ろうばい)」がおすすめです。 その名の通り、蝋細工のような透明感のある黄色い花は、雪の白さにとてもよく映えます。そして何より、香りが素晴らしい。冷えた空気の中に漂う甘い香りは、春の訪れを一足早く教えてくれます。

【お飲み物:胃に優しいお茶】

七草がゆを食べた後の午後は、カフェインの強い濃いお茶よりも、「番茶」や「ほうじ茶」はいかがでしょうか。 南砺の暮らしに馴染み深い「棒茶(ぼうちゃ)」を、少し熱めの温度で淹れる。香ばしい香りが部屋を満たし、和菓子の甘さを優しく包み込んでくれます。


五、人日の節句に考える「人」の尊さ

「人日の節句」が、本来「人を敬い、大切にする日」であったという原点に立ち返ってみると、現代の私たちにとっても非常に重要なメッセージが含まれていることに気づかされます。

日々、仕事や家事に追われ、誰かのために走り回っている皆様。 この日ばかりは、自分自身を一つの「命」として慈しんでみてください。 「今年も一年、この体が健やかでありますように」 そう願いながら温かいものを口にし、美しいお菓子を眺める。

それは贅沢なことではなく、人間が人間らしく生きていくために必要な「心の調律」なのです。我々北陸・南砺の厳しい冬は、私たちに「じっと待つこと」や「内面を見つめること」を教えてくれます。雪がすべての雑音を消してくれるこの季節こそ、人日の節句の精神を味わうのに最も適した時期と言えるかもしれません。


六、結びに ― 春を待ちわびて

3,000字を超える長い物語に最後までお付き合いいただき、心より感謝申し上げます。

「人日の節句」が終わると、いよいよ冬の本番を迎えつつも、暦の上では少しずつ春への準備が始まります。私たちの和菓子屋も、次は「節分」「立春」に向けて、また新しい物語を練り上げていく毎日です。

外はまだ深い雪の中。ですが、当店の暖簾をくぐれば、そこにはひと足早い春の色が溢れています。 「ちょっと一息つきたいな」 そう思った時は、どうぞお立ち寄りください。温かいお茶と、心を込めて作ったお菓子をご用意して、皆様の「ひととき」が輝くお手伝いをさせていただきます。

皆様の新しい一年が、七草の生命力のように健やかで、喜びに満ちたものとなりますよう、雪降る南砺の街角よりお祈り申し上げます。


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