こんにちは、和菓子屋のあんまです。
まだ暑い日にも優しさを添えて 上生菓子『姫菊』の可愛らしい丸み
暦の上では秋といっても、まだまだ日差しが強い日がありますよね。そんな残暑の中、ふと目を引くのが、可憐に咲く姫菊(ひめぎく)の姿です。小さくて丸っこい花びらが、健気で本当に可愛らしいんです。
私は、この姫菊の持つ「丸み」と「優しさ」に心を奪われてしまいました。
今回は、その愛らしい姿を、上生菓子の練切で表現してみました! 銘は、そのまま『姫菊』です。
練り切りで生み出す「花びらのフリル」
この『姫菊』は、練切を使い、寄りだしとヘラ入れをして姫菊の凛とした形を表現しました。
まず、花びらの色は、淡いピンク色にしました。これは、姫菊の、ふんわりとした柔らかさを表現しています。
そして、一番のこだわりポイントは、この丸い花びらのフリル感です! 寄り出しで薄く伸ばした練切を、ヘラで一つ一つ丁寧に切り込みを入れ、花びら一枚一枚に優しい丸みを持たせました。この丸みが、姫菊の可愛らしい雰囲気を出してくれています。
中心に向かうにつれて、花びらがキュッと立ち上がっているのが分かりますか? この立体感が、和菓子に本物の花の生命力を与えてくれるんです。
真ん中には、濃いめの黄色の練切をそっと埋め込みました。このしべの部分が、白っぽい花びらにアクセントと輝きを与えてくれてより菊らしさを表現してくれます。
黄身あんのまろやかさが、花の温もり
札にある通り、この『姫菊』の中身は黄身あんを使っています。
黄身あんの持つまろやかでコクのある甘さは、この優しいピンク色にぴったり! 菊の花言葉には「高貴」や「清らか」といった意味がありますが、この黄身あんの素直な甘さが、花の持つ温もりや親しみやすさを表現してくれているように感じます。
練切の繊細な形と、黄身あんのホッとする甘さが合わさって、残暑の疲れを癒やしてくれるような、そんな味わいに仕上がっています。

愛らしい花を愛でる「ひととき」
姫菊のように、小さくて可憐な花を愛でる時間は、心に優しさと静けさを運んでくれます。
この『姫菊』をいただくときは、ぜひ、午後の光が差し込む時間に。冷たい煎茶や、少し酸味のあるフルーツティーなどと合わせていただくのも、可愛らしくておすすめです。
この小さな花を眺めながら、自分の中の優しい気持ちと向き合う。皆さんも、この『姫菊』で、心温まる、贅沢な「ひととき」を過ごしてくださいね。

