こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『雪平』を作りました。
❄️ 冬の初めに静かに佇む 上生菓子『田舎家』が語る冬の物語
寒さが里山を覆い、冬の便りが感じられる頃。
ぽつんとたたずむ古い茅葺き屋根の家の姿は、なんとも言えない郷愁と侘しさを感じさせます。
この時期の田舎の景色は、色彩が少なくなり、寂しさが増してきます。
この簡素な美しさ、冬と藁の色のモノトーンの世界に、私は深く惹かれます。
それは、「贅沢なものが何もないからこそ、心の中の豊かさが際立つ」、そんな日本の「わび・さび」の感覚かもしれません。
今回は、そんな初冬の田舎の静かな情景を上生菓子の練切で表現してみました！
菓名は、素朴な情景をそのまま表す『田舎家（いなかや）』です。
雪平の白が表現する「静かなる雪景色」
この『田舎家』は、雪平を使った「包み込み」と「焼き印」の技法で、その素朴な姿を表現しました。
今回はお菓子の白さと茅葺き屋根の家の形にこだわりました。
雪平を使い冬の白いイメージを出しました。
真っ白に仕上がる雪平は冬の侘しいイメージを出すにはぴったりです。
雪平の作り方はこちらから。
しっかりとあんこを包めたら、手である程度形を作り、屋根の部分はしっかりと形がでるように平板の角を使って表現していきます。
また、焼印で家の門を表現する柵をイメージして焼き目をつけました。
先の細い焼きごてでスッと引くことによってきれいに細く引くことができます。
白あんの「優しい甘さ」が、家の中に広がる温もり
菓名札にある通り、この『田舎家』の中身は白あんを使いました。
この寒々しい見た目に対して、白あんの持つ優しく、ホッとするような甘さは、まるで田舎家の囲炉裏の炎や、土間の隅から立ち上る湯気のような、素朴な温もりを表現しています。
寒い冬の夜、家の中で感じる静かな安らぎや、家族が寄り添う暖かさを、この白あんのまろやかな口溶けと上品な甘さに込めたんですよ。雪平のしっとりとした舌触りと、白あんの穏やかな風味が合わさって、冬の静けさの中でいただくのにぴったりの味わいです。
静けさの中の安らぎを慈しむ「ひととき」
田舎家は、これからの厳しい雪に耐え、じっと春を待つ忍耐の象徴でもあります。そこには、派手さはありませんが、日々の暮らしを大切にする、力強い美しさが詰まっています。
この『田舎家』をいただくときは、ぜひ、熱いほうじ茶や、玄米茶など、素朴で香ばしいお茶と合わせてみてください。この和菓子を眺めながら、雪に閉ざされた静寂と、屋根の下で守られている安らぎを感じる。
皆さんも、この『田舎家』で、冬の静けさに包まれる、心温まる「ひととき」を過ごしてくださいね。
