こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『柿』を作りました。
の陽射しを浴びて艶めく 上生菓子『柿』のほっこりとした甘さ
秋が深まり、空が高く澄み渡る頃。庭先や田舎道を歩いていると、オレンジ色の丸い実をたわわに実らせた柿の木の姿が目に飛び込んできますよね。あの鮮やかな色は、まさに秋の太陽の色! 葉が落ちても、実だけが残っている姿は、どこか力強くて、日本の秋のシンボルだと思います。
私の地元も柿で有名です!
私は、この柿の持つ「温かい色」と「優しい甘さ」が大好きなんです。
今回はそんな秋の恵みを、上生菓子の練切で表現してみました! 菓名は、もちろん『柿』です。
練切で再現する「柿の実の艶」と「ヘタの形」
この『柿』は、練切を使った包み仕上げの技法で、その姿を表現しました。
まず、柿の実の色です。まだ青かった柿が太陽の日差しをたっぷり浴びて、きれいなオレンジ色になってきます。
青柿も上生菓子で作っていますのでこちらもごらんください。
練切を、熟した柿のような温かみのある鮮やかなオレンジ色に染めました。表面は、錦玉液で艶天をかけてほんのり艶を出すことで、秋の陽射しを浴びてキラキラと輝く柿の実の質感を再現しています。
形は、ころんと丸く。手のひらに乗せると、本物の柿のような愛らしい重みを感じられるように仕上げました。
そして、柿らしさを決定づけるのが、頭に乗った「ヘタ」の部分です。
茶色に染めた練切を、柿のヘタ特有の四角い形にあわせて抜型で抜いて、そっと実の上に乗せました。青柿のときに比べてヘタも色がくすんできており、この茶色のヘタがあるおかげで、一気に秋の「柿」の姿になります。
この小さな細工が、和菓子の遊び心とリアリティを深めてくれるんです。
黒あんの「渋み」が、柿の深みを引き出す
菓名札にある通り、この『柿』の中身は黒あんを使いました。
柿には甘柿と渋柿がありますが、この和菓子では、黒あんの持つ素朴で深い甘さの中に、ほんのりとした「渋み」のイメージを重ねました。この深みが、柿という果物の持つ「豊かさ」と「味わい」を表現してくれているように感じます。
練切の優しい口溶けと、黒あんのどっしりとしたコクが合わさって、まさに秋の恵みを凝縮したような、ホッとする味わいに仕上げています。

家族団欒の秋を彩る「ひととき」
柿は、古くから長寿や幸運の象徴として親しまれてきました。家族や友人と囲む食卓を彩る、温かい果物です。
この『柿』をいただくときは、ぜひ、少し肌寒くなってきた夕食後などに。熱い番茶や、深煎りのほうじ茶など、素朴で香ばしいお茶と合わせてみてください。
この可愛い柿を眺めながら、季節の移り変わりや、実りの喜びをゆっくりと感じる。皆さんも、この『柿』で、心温まる、贅沢な「ひととき」を過ごしてくださいね。


