こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『寒牡丹』を作りました。
❄️ 雪中に咲く孤高の美 上生菓子『寒牡丹』
寒牡丹という花の不思議
皆さんは、冬に咲く牡丹に二つの呼び名があるのをご存知ですか? 一つは「冬牡丹」、そしてもう一つが今回の菓名にもした「寒牡丹」です。
実は、この二つは似ているようで、植物学的にはちょっとした違いがあるんですよ。
- 冬牡丹(ふゆぼたん): 春に咲く品種を、温度管理や温室栽培によって冬に咲くように調整したものです。お正月に合わせて見事に開花しているのは、多くがこちらの冬牡丹ですね。
- 寒牡丹(かんぼたん): こちらはもっと特別。春と冬、年に二回花を咲かせる性質を持つ品種なんです。
特に寒牡丹は、厳しい寒さの中で自分の力だけで咲こうとするため、葉が少なかったり、花が小ぶりだったりします。でも、その「控えめながらも芯の強い美しさ」こそが、茶道や和菓子の世界では古くから愛されてきました。
雪から花を守るために、藁(わら)で作られた小さな屋根「藁ぼっち」を被せてもらっている姿は、冬の風物詩として本当にかわいらしく、また大切にされているのを感じて心が温まりますよね。
練切で表現する「命の灯火」
今回、私が作った『寒牡丹』は、練切を使用しています。
ピンクに染めた練切に白の練切でぼかして、よりだしていきます。
黄色に染めた練切をよりだした中に配置し、ささらで中心に向かってあとをつけていきます。
しっかりとよりだされていると、中心に向かってすぼんていくような形になります。
最後にスプーンで3か所あとをつけます。
これで花びらが重なっているようにみえるように仕上げていきます。

味わいに込めた「冬の優しさ」
中あんは、見た目の繊細さを邪魔しないよう、しっとりとした「白あん」を包んでいます。
練切のなめらかな舌触りと、白あんの品の良い甘さ。口の中でゆっくりと溶けていく感覚は、冷えた体に染み渡るような優しさがあります。
派手な味ではありませんが、素材の良さをストレートに感じられる、冬の静かな午後にふさわしい味わいを目指しました。
寒牡丹を愛でる「ひととき」の楽しみ方
この『寒牡丹』をいただくときは、ぜひ「藁ぼっち」の中の情景を想像してみてください。
外は冷たい風が吹き、雪が舞っているかもしれません。でも、藁の屋根に守られた牡丹は、誰に見せるためでもなく、ただ静かに、自分の命を輝かせています。
少し濃いめに淹れたお抹茶はもちろん、香りの良い熱いほうじ茶もおすすめです。
和菓子は、ただ食べるだけでなく、その背景にある季節や物語を一緒に味わうもの。 この『寒牡丹』を通して、皆さんの心の中に、小さな冬の灯りがともれば嬉しいです。
まだまだ寒い日が続きますが、皆さんもどうぞ温かくして、素敵な「ひととき」をお過ごしくださいね。

