こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『枯野』を作ってみました。
❄️ 冬の静寂を映す色 上生菓子『枯野』に込めた想い
菓名『枯野』に託した冬の情景
冬の季語でもある「枯野(かれの)」。皆さんはこの言葉を聞いて、どんな景色を思い浮かべますか?
芭蕉の有名な句にもありますが、枯れ果てた野原というのは、一見すると命が途絶えたような、わびしさが漂う場所です。でも、じっと眺めていると、そこには冬の低い陽射しを浴びてキラキラと光る枯草や、冷たい風に耐え忍ぶ大地といった、静かな力強さが隠れていることに気づきます。
木々も葉を落とし、骨組みだけになった枝が空を指す姿。その削ぎ落とされた潔い姿を、お菓子という小さな世界で表現したいと考えました。
練切で描く「冬の質感」
今回の『枯野』は、練切で作りました。
練切に黒の摺りごまを加えることによって、、冬の乾いた土や、霜が降りた地面、あるいは寒空の下の空気感を表現することができます。
また、ごまの風味が加わることで普通の練切との違いを生み出すことができます。
今回は絞り布巾を使って、ぐっと押し込むように絞り目を作りました。
その上に、練切で抜いた楓の葉を一枚。
晩秋から初冬にかけての真っ赤でどこか茶色い楓の葉。
一面が枯れ色に変わった野原で、最後の一葉が散らずに残っている……そんな秋の名残と、冬の寒さの中で際立つ色彩の命をこの紅葉で表現しました。
このような表現方法で「あぁ、冬が来たんだな」と感じてもらえるように仕上げてみました。

黒あんが紡ぐ、深みのある味わい
お菓子の中身にも、季節の深まりを反映させています。
今回の『枯野』に選んだのは、黒あんです。
練切特有の滑らかな舌触りが、黒あんの深いコクを包み込み、お口の中でゆっくりと解けていきます。
この、「見た目のわびしさ」と「味の豊かさ」のギャップこそが、上生菓子の醍醐味ですよね。
🍂 木々が枯れるということ:冬の「わび・さび」
冬の木々を見て「寂しいな」と感じるのは自然なことですが、茶道や和菓子の世界では、その寂しさの先にある「美」を見出します。
すべてを脱ぎ捨てて、根っこにエネルギーを蓄える木々の姿。それは「終わり」ではなく、「次への準備」でもあるんですよね。葉を落としたからこそ見える、樹形の美しさ。色がなくなったからこそ、一ひらの紅葉の赤が、これほどまでに心に響く。
そんな引き算の美学が、この『枯野』という一粒に凝縮されています。
おすすめの「ひととき」の過ごし方
この『枯野』をいただくときは、ぜひ熱いほうじ茶や、深めに淹れたお煎茶を用意してみてください。
- 香ばしさの共演: 生地のごまの香ばしさと、ほうじ茶の香りがリンクして、心がじんわりと解けていくのを感じるはずです。
- 器の選び方: 写真のような、少し土の風合いが残る力強い器に載せると、より一層『枯野』の情景が引き立ちますね。
窓の外の寒空を眺めながら、温かいお茶と共にこのお菓子を口に運ぶ。 それは、忙しい日常の中でふと立ち止まり、季節の呼吸を肌で感じる贅沢な時間です。
冬の始まりは、少し心が静かになる季節。 皆さんも、この『枯野』のような、静寂の中に美しさを見つける「ひととき」を過ごしてみませんか?

