こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『山茶花』を作りました。
寒さに負けずに咲き誇る 上生菓子『山茶花』の愛らしい横顔
秋が終わり、木枯らしが吹き、いよいよ冬の足音が聞こえてくる頃。庭や公園の景色が少し寂しくなってきたな、と感じる中でも、ひときわ明るく、可憐に咲き始める花があります。それが山茶花(さざんか)です!
椿(つばき)によく似ていますが、山茶花は花びらが一枚一枚散るのが特徴的で、散った花びらが地面を彩る様子もまた美しいですよね。この、寒さに負けずに咲く健気な姿と、淡いピンク色の花びらを見ると、なんだか心が温かくなります。
今回は、そんな冬の始まりを告げる山茶花の愛らしい姿を、上生菓子の練切で表現してみました!
菓名は、そのまま『山茶花(さざんか)』です。
練切で表現する「ふっくらした花」と「散り際の美しさ」
この『山茶花』は、練り切りを使い絞りとヘラ入れの技法で、そのふっくらとした姿を表現しました。
まず、一番こだわったのは、花の色と形です。
- 花の色: 練切を優しい淡いピンク色に染め、白練切とぼかしました。これは、最も一般的な山茶花が持つ、ふんわりとした温かみのある色を表現しています。
- 花の形: 花びらを一枚一枚丁寧に表現するのではなく、全体をふっくらと丸いフォルムに整え、優しいカーブを描くようにもう一枚があるかのように仕上げました。花びらは少し動きのあるように形を整えました。
ポイントは、花芯(かしん)と葉っぱの細工です。
- 花芯: 花の側面から少し顔を出している黄色いそぼろで、山茶花のフワフワとした雄しべを表現しました。
- 葉っぱ: そして、緑色の羊羹を薄く流して抜いた葉を添えました。この葉が、花が咲いている木全体の生命力を表現してくれています。
このふっくらとした形が、寒さの中で身を寄せ合って咲いているような、山茶花の健気な様子を伝えてくれているでしょう?

黄味あんの「温かさ」が、冬の訪れを優しく包む
菓名札にある通り、この『山茶花』の中身は黄味あんを使いました。
この淡いピンク色の花に対して、黄味あんの持つまろやかでコクのある優しい甘さは、まさに冬の訪れを優しく包み込む「温かさ」を表現しています。
黄味あんの口溶けの良さと、練切のしっとりとした舌触りが合わさって、ほっこりと心温まる味わいになっています。花が少ない季節に、このお菓子をいただくことで、視覚からも味覚からも癒しを感じてほしいなと思います。
寒さの中で慈しむ「ひととき」
山茶花は、寒さに耐えながら、秋の終わりから冬にかけて長く咲き続ける、力強い生命力を持っています。
この『山茶花』をいただくときは、ぜひ、温かいお抹茶や、深みのある煎茶など、温かさが持続するお茶と合わせてみてください。この可愛い花を眺めながら、冬の訪れや、自然の生命力に想いを馳せる。
皆さんも、この『山茶花』で、心穏やかな、冬の始まりの静かな「ひととき」を過ごしてくださいね。

