こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子『立葵』をご紹介します。
上生菓子とは、日本の伝統的な和菓子の一種で、特に茶道や季節の行事で用いられる主菓子です。
上生菓子では季節の花や生き物、風景などから季節を感じられる言葉を具現化して表現したものまで色んな種類の材質(お菓子の種類)で表現します。
その種類一つにとっても様々な表現方法があり、職人の技術がお菓子として見られるのも特徴です。
今回の『立葵』は練切(ねりきり)製です。
練切とは、あんこに餅や芋などのつなぎを加えて、のびやすく作業性のあるあんこで、繊細でデザイン性のあるお菓子が作れることが特徴です。
白餡に餅や芋を加えるとより白くあがり、着色をして様々な色を表現できることも特徴です。
『立葵』
この梅雨の時期。どうしても周りも空気感もどんよりしていることが多いですが、ひと際目立つピンク色の花のイメージがあります。
立葵が咲いて外が晴れると、「夏がきたなぁ!」と感じられますよね。
〇立葵の基本情報
項目 | 内容 |
---|
和名 | 立葵(たちあおい) |
学名 | Alcea rosea |
英名 | Hollyhock(ホリーホック) |
科名 | アオイ科(Malvaceae) |
原産地 | 中央アジアまたは中東 |
花の時期 | 初夏〜盛夏(6〜8月) |
草丈 | 1〜3メートル(かなり高くなる) |
今年(2025年)はとっても暑いので立葵が咲くのも早そうですね。
〇名前の由来
・「立つように真っ直ぐに高く伸びる」+「アオイ(葵)」という姿から「立葵」と呼ばれます。
・「葵」は古来、葉が丸くて大きく、放射状に広がる形を「日(太陽)に向かう」姿になぞらえたとも言われています。
中央アジアなどが原産なので名前は後からつけられた日本名なんですね~
〇花の特徴
・下から順番に咲いていく:花穂が長く、下の花から順に咲き進み、頂上の花が咲く頃に梅雨が明けるとされ、季節の指標にもなっています。
・一重咲き、八重咲きがあり、観賞価値が高い。
・日当たりと風通しの良い場所を好む。
頂上の花が咲くころに梅雨が明ける。
ということは梅雨の花なのか。それとも頂上がきれいに咲いた時がきれいという意味で夏の花なのか。どちらともとれるのかなと思います。
立葵はこのような花になります。

今回はピンク色の立葵を作りますが、特徴としてしべの近くの濃い赤色もしっかりと表現していきたいと思います。
では『立葵』を練切で作っていきます。
まずはベースとなる色のピンク色を着色します。
感覚的には淡めの着色にします。

写真では少しピンク色に見えないかな。
しべ周りを表現するための赤色は濃いめの着色にします。

中あんは黄味餡を使います。この後の工程で形を作るときに深く動きを付けるので、中あんはなるべく薄めの色合いのものを使用します。

次にピンクの練切をこのように大小2つに分けて、

大きいほうのピンクの練切をてのひらで薄くのばし、真ん中をくぼませます。

赤い練切を少量とってくぼみの中にいれます。

そのうえから先ほど取っておいた小さいピンク練切を貼ってのばし、

中あんを包餡(あんこを包むこと)していきます。


表面にほんのりと赤色が浮かんでいる状態です。
次にこれを濡れ布巾で絞っていきます。
水で濡らした布巾をかたく絞って、お菓子を乗せます。

これを絞っていきます。
お菓子の中央に集めてまとめてねじります。

このねじった部分をお菓子に向けてグッと押し込みます。

絞り目がしっかりとついた状態になります。
これが立葵の花の模様になります。


グッと押し込むことで裏に入れていた赤色がぼやけて出てきます。
ここから三角ヘラで花びらを作っていきます。
今回は5弁で作ります。


しべを作っていきます。
立葵のしべは特徴的なしべなので、それに合わせた特徴的なつくりをします。
まずは箸の先で穴を作ります。


ここに黄色に着色した練切をこのような形に成形して、

これの太い部分を薄い黄色に着色した新引粉につけます。
こちらがその新引粉。

ちょんちょんっと。


穴の開いた部分にしべの細い部分を差し込んだら完成です。


今回は練切で『立葵』を作りました。
今回作った練切は絞りで模様を作ったり、しべが特徴的に表したりと、
花というお題でも少し作りが特徴的で面白いものになったと思います。
色々な花を色々な技法を使って表現できるのはまた面白いものですね!
ぜひお抹茶や煎茶と一緒に季節を感じながら、ホッと一息。どうぞ召し上がってください。
そんな私の作るお菓子が食べられるお店は富山県南砺市にある朝山精華堂というお店になります。
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