こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『柚子』(ゆず)を作ってみました。
上生菓子とは、日本の伝統的な和菓子の一種で、特に茶道や季節の行事で用いられる主菓子です。
上生菓子では季節の花や生き物、風景などから季節を感じられる言葉を具現化して表現したものまで色んな種類の材質(お菓子の種類)で表現します。
その種類一つにとっても様々な表現方法があり、職人の技術がお菓子として見られるのも特徴です。
今回の『柚子』は練切(ねりきり)製です。
練切とは、あんこに餅や芋などのつなぎを加えて、のびやすく作業性のあるあんこで、繊細でデザイン性のあるお菓子が作れることが特徴です。
白餡に餅や芋を加えるとより白くあがり、着色をして様々な色を表現できることも特徴です。
寒さを吹き飛ばす爽やかな香り 柚子の黄金色の温もり
本格的な冬がやってきて、空気がキンと冷え込む頃。
キッチンや街角からふと漂ってくる、あの爽やかで、どこか懐かしい香りに、思わず深呼吸してしまいます。それが、柚子の香りです!
柚子の特徴
柚子は、日本において冬の風物詩として広く知られている柑橘類です。
奈良時代か平安時代に中国から伝来したとされています。
1. 独特の香りと成分
柚子の最大の特徴は、何と言ってもその香りです。
- 香り成分: 柚子の皮に含まれる主要な香り成分は「リモネン」や「テルペン系化合物」です。これらの成分が、リラックス効果(アロマテラピー効果)や、血行促進効果をもたらすと言われています。この清涼感のある香りが、寒い冬の緊張を和らげてくれます。
- 用途: この強い香りは、料理の風味付け(薬味)、ポン酢やジャム作り、そして日本の伝統である柚子湯(ゆずゆ)に利用されます。
- 収穫期: 柚子の主な収穫は晩秋から冬にかけて。寒くなるほど香りが強くなると言われています。
- 特徴: 他の柑橘類と違って、皮が分厚く、果汁が少なく、種が多いのが特徴です。でも、その皮にこそ、強烈な、最高の香りが詰まっています。
- 利用法: 料理に絞ったり、お風呂に入れたり(冬至の柚子湯は有名!)、その香りを活かして、日本の冬の暮らしに欠かせない存在なんです。
今回は、そんな冬の宝石のような柚子の、黄金色の姿と爽やかな香りを、上生菓子の練り切りで表現してみました!
菓名は、そのまま『柚子(ゆず)』です。
練切で表現する「柚子の肌の質感」
この『柚子』は、練切を使いその特徴的な姿、特に肌の質感にこだわって作りました。
まず、一番こだわったのは、この柚子特有のデコボコした皮の質感です。
黄色(柚子色)に染めた練切で柚子あんを包餡(あんこを包むこと)し、丸みを作ると、その表面を爪楊枝でたくさん刺してデコボコした皮を表現しました。
最後にヘタの部分に緑の練切を配置し、柚子の葉っぱは緑の羊羹を薄く流して、型抜きをして乗せました。
手のひらに乗せると、そのふっくらとした丸みと、デコボコの皮の質感が、本物の柚子のような愛らしさを感じられます。

柚子あんの「爽やかさ」が、寒さに負けない活力をくれる
今回の『柚子』は、白あんベースに柚子の皮(刻んだもの)を混ぜた「柚子あん」を使い、餡からも柚子の爽やかな香りが立つように工夫しました。
あんこの優しい甘さの中に、柚子のキリッとした酸味と清涼感が加わることで、冬の寒い時期に飲む温かい柚子茶のような、体の中からホッと温まるような味わいになります。
練切の軽やかな口当たりと、柚子あんの爽やかな風味が合わさって、冬の寒さを忘れるような、明るく前向きな気持ちをくれる一品に仕上げています。
爽やかな香りに包まれる「ひととき」
柚子の香りは、リラックス効果や血行促進効果もあると言われています。
この『柚子』をいただくときは、ぜひ、温かいお抹茶や、緑茶など、少し苦味のあるお茶と合わせてみてください。柚子の爽やかな香りを鼻から吸い込みながら、目を閉じて、柚子湯に浸かっているような、温かく贅沢な気分を味わう。
皆さんも、この『柚子』で、心身ともに清められる、**冬の静かで爽やかな「ひととき」**を過ごしてくださいね。

