こんにちは、和菓子屋のあんまです。
まだ青い夏の記憶を閉じ込めて 上生菓子『青柿』の涼やかな仕上がり
夏の終わり、秋の気配が少しずつ混ざり始める頃、ふと空を見上げると、木々に小さな実をつけている柿の姿を見つけます。まだ硬くて青い柿は、夏の終わりと秋の訪れのちょうど境目にいるみたいで、見るたびに心がキュンとなります。
今回は、そんな夏の終わりの涼やかな情景を、上生菓子の練り切りで表現してみました! 銘は『青柿(あおがき)』です。
ヘラで表現する「青い果実」の張り
まず、今回こだわったのは、あの青柿特有のツヤとハリです。
練り切りを、瑞々しい青磁のような淡い緑色に染めて、丁寧に丸めていきます。青い果実って、熟した実にはない、ピンとした硬さと張りが魅力ですよね。表面はあえてツルンと滑らかに仕上げて、まだ若い果実の「みずみずしさ」を表現しました。
そして、この『青柿』の一番のポイントは、頭の部分です。小さなヘタの形を、濃い緑色の練切り表現して、中心にそっと乗せます。このヘタが、全体を引き締めてくれます。
このヘタの形はアジサイの抜型を使って抜いています。このちょっとした手間が、お菓子に本物らしい生命力を与えてくれるんです。
中には夏の夜の色、『黒あん』を包んで
札にある通り、今回この『青柿』に合わせたのは、黒あんです。
青柿はまだ渋くて食べられないけれど、この和菓子は黒あんのコクと優しい甘さのおかげで、美味しくいただけます(笑)。見た目の爽やかな緑色に対して、黒あんの深みのある甘さが、まるで夕暮れの影のようなコントラストを生み出してくれます。
青々とした見た目から想像するよりも、ずっと落ち着いた、まろやかな味わいになっているので、初めて食べた方もおいしく食べることができます。

涼しさと静けさを楽しむ「ひととき」
青柿は、私たちに「夏が終わるよ、でも大丈夫だよ」と優しく語りかけてくれているように感じます。
自分で作ったこの『青柿』を、涼しいお部屋で、熱すぎない温かい煎茶と一緒にいただくのが、私のおすすめです。
冷たいお菓子も良いですが、温かいお茶と合わせると、練り切りの優しい甘さがより引き立ちます。静かにこの青い丸い実を眺めながら、夏の思い出を整理する。
この『青柿』が、皆さんの心にも、清々しい癒やしの「ひととき」を運んでくれますように!