こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『もみじ葉』を作りました。
上生菓子『もみじ葉』〜ほっくり秋色に染まるひととき〜
急に朝晩の空気がキリッとしてきましたね。この季節になると、なんだか気持ちが引き締まるというか、ワクワクするんですよね。待ちに待った紅葉のシーズンの到来です!
まずは身近な和菓子で秋を感じてみよう!ということで、今月のお菓子は、この季節に欠かせないモチーフ、もみじをテーマにした上生菓子を作ってみました。
🍂 秋の風情を閉じ込めた一葉
ひらりと手のひらに舞い落ちてきたばかりのような、優しく、そして美しいグラデーションを目指して作りました。
このお菓子は、練切製。白餡に求肥を混ぜて作った、繊細で口どけの良い生地を使っています。色付けは、紅葉が始まる直前の、ほんのり黄色く色づき始めた一瞬を切り取ったイメージ。淡い黄色から、オレンジがかったグラデーションになるように、ぼかしの技術で作りました。
秋の陽ざしを受けてキラキラと輝くような、ちょっとハッとするような美しさを表現しました。
こだわりは「葉脈」と「ほっくり感」
上生菓子はその形や細工に作り手の個性がすごく出るんですが、今回は特にもみじの持つ生命力と繊細さを表現することにこだわりました。
まず、もみじの葉のギザギザとした葉先は、しっかりとシャープに。そして、最も重要なのが、葉の中央から放射状に広がる葉脈(ようみゃく)の表現です。この葉脈を細い道具で丁寧につけることで、ただの塊ではなく、「一枚の葉っぱ」としてのリアリティがグッと増すんです。この作業、集中力が命!息を止めて、一気に仕上げます。

この『もみじ葉』には、やっぱり香ばしいほうじ茶が最高に合いますね。もみじの視覚的な美しさと、栗餡のほっくり感、そしてほうじ茶の香ばしい香りが、日本の秋の最高の組み合わせだと思います。
なぜ私たちは「紅葉」に心惹かれるのか
さて、少し話は逸れますが、みなさんはどうして紅葉が好きですか?
日本人って、本当に四季の移ろいを愛でるのが上手ですよね。春の桜が「始まり」と「華やかさ」を象徴するなら、秋の紅葉は、まさに「成熟」と「潔さ」の美学だと思うんです。
緑色だった葉っぱが、太陽の光をたっぷり浴びて、夏の間懸命に光合成をして蓄えた色素が、気温が下がると共に顔を出し、鮮やかな赤や黄色に変わっていく。
これって、一種の命の輝きの集大成ですよね。
そして、その見事な彩りを一瞬見せたかと思うと、潔くひらひらと地面に舞い落ちて、冬の準備に入る。このドラマチックな変化が、私たちの心を捉えて離さないのではないでしょうか。
紅葉は、自然が織りなす「色のマジック」であり、「時の流れの芸術」です。 そして、この『もみじ葉』のような和菓子は、その美しい一瞬を切り取って、手のひらサイズに凝縮したものだと思っています。
窓から見える景色はまだ青々としているかもしれませんが、このお菓子を前に座って、静かにほうじ茶をすすりながら味わう時間は、まさに自分だけの「秋の小旅行」。五感で秋の深まりを感じる、贅沢なひとときですよね。
お菓子作りの醍醐味
手作り和菓子の醍醐味は、こうして季節を表現できることと、それに合う器との組み合わせを考える時間かもしれません。みなさんも、お気に入りの秋の器に和菓子を乗せて、自分だけの素敵な「和菓子時間」を過ごしてみてはいかがでしょうか?

