こんにちは、和菓子屋のあんまです。
空は高く、実りの秋の訪れを告げる 上生菓子『赤とんぼ』の愛らしい姿
夏の猛烈な暑さが和らぎ、空が澄んで高く見えるようになりました。田んぼの稲穂が色づき始めると、どこからともなくヒラヒラと舞ってくるのが赤とんぼですよね。
あの、空を優雅に飛ぶ姿を見ると、「ああ、今年もちゃんと秋が来たんだな」とホッとします。今回は、そんな秋の使者、赤とんぼをモチーフにした上生菓子を作ってみました! 銘は、そのまま『赤とんぼ』です。
グラデーションで表現する「秋の空気」
この『赤とんぼ』は、練切を二層に分けて作っているのがポイントです。
上半分は、夕焼け空を思わせるような、温かみのある橙色に染めました。これは、赤とんぼの体色と、少し寂しげな秋の空気を表現しています。下半分は、まだ青みが残る稲穂の黄色。この二色が重なることで、夏の終わりから秋への移ろいが感じられるようにこだわりました。
そして、このお菓子の最大のチャームポイントは、中心に押した「とんぼの焼印」です!
この小さな焼き印、なんだか猫の顔みたいにも見えて、すごく愛らしいと思いませんか? この印があるおかげで、和菓子全体に遊び心と物語が生まれるんですよね。
このとんぼが、まるで夕焼け空をゆったりと飛んでいるような情景をイメージして、形は巻仕上げにしました。巻仕上げにすることで情景がよくわかりやすくしてあります。
柔らかな『白あん』が届ける秋の優しさ
札にある通り、この『赤とんぼ』の中身は白あんです。
赤とんぼの温かい色合いと、白あんのまろやかで優しい甘さが、本当に相性が良いんです。口の中で溶ける練り切りの食感と、白あんのすっきりとした甘みが、夏の疲れを癒やしてくれるように感じられます。
白あんの風味は、秋の澄んだ空気みたいに、雑味がなくクリア。この優しさが、秋の訪れをそっと教えてくれているような、そんな味わいです。

季節の変わり目を楽しむ「ひととき」
赤とんぼは、私たちに「季節が変わるよ」と教えてくれる、自然からのメッセージです。
この『赤とんぼ』を、少し温かめのほうじ茶や、秋に収穫された新茶などと合わせていただくのが最高です。
このお菓子を前にして、夏の喧騒を忘れて、ゆったりとした気持ちで秋の準備をする。そんな静かで心豊かな「ひととき」を、皆さんも楽しんでみてくださいね。