上生菓子『涼景』

上生菓子涼景 上生菓子

滴の清流に映る、夏の風情。上生菓子『涼景』

木陰を吹き抜ける風が、心地よい季節。 照りつける太陽の光も、木々の葉を透過して、ひんやりとした木漏れ日となって降り注ぎます。

手に取ると、透明な球体の奥に、淡いピンク色の金魚が二匹、そして茶色い小さな粒がひとつ、静かに浮かんでいるのが見えます。 この透明感は、錦玉羹(きんぎょくかん)という、寒天を主原料にした和菓子の技法によって生み出されるものです。

錦玉羹を作るための錦玉の作り方はこちらから。

まるで、川底を流れる水の中をのぞき込んだかのような、あるいは、澄んだ湖面に浮かぶ花をそのまま掬い取ったかのような、息をのむ美しさです。

錦玉羹のぷるんとした瑞々しい感触は、夏の暑さを忘れさせてくれます。 口に運ぶと、ひんやりとした涼感がまず舌に広がり、その後、金魚の羊羹の意匠は、一瞬の美を永遠に留めたいという、職人の願いが込められているかのようです。

この和菓子は、ただ美しいだけでなく、五感で涼を楽しむことができます。 冷たい器に乗せれば、見た目からも涼しさが伝わり、そのつるりとした食感は、暑さに疲れた体と心に潤いを与えてくれます。 冷茶や、すっきりとした味わいの冷たい煎茶とともにいただけば、一層その清涼感を堪能できるでしょう。

『涼景』という銘は、まさにこの和菓子が持つ世界観そのものです。 一粒の和菓子の中に、夏の日の清らかな風景を映し出す。 そこには、日本の職人が古くから大切にしてきた、自然を愛でる心が息づいています。 この小さな芸術品を味わうことで、日常の中に、ささやかで豊かな「ひととき」が生まれるのです。

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