上生菓子『鉄線』

上生菓子鉄線 上生菓子

こんにちは、和菓子屋のあんまです。

今回は上生菓子『鉄線』をご紹介します。

上生菓子

上生菓子とは、日本の伝統的な和菓子の一種で、特に茶道や季節の行事で用いられる主菓子です。
上生菓子では季節の花や生き物、風景などから季節を感じられる言葉を具現化して表現したものまで色んな種類の材質(お菓子の種類)で表現します。
その種類一つにとっても様々な表現方法があり、職人の技術がお菓子として見られるのも特徴です。

今回の『鉄線』は練切(ねりきり)製です。

練切(ねりきり

練切とは、あんこに餅や芋などのつなぎを加えて、のびやすく作業性のあるあんこで、繊細でデザイン性のあるお菓子が作れることが特徴です。

白餡に餅や芋を加えるとより白くあがり、着色をして様々な色を表現できることも特徴です。

『鉄線』

今回の鉄線は花を表しています。

まずは鉄線について詳しくみてみましょう。

〇鉄線の情報

・ 和名:鉄線(てっせん)
・ 学名:Clematis florida
・ 英名:Clematis(クレマチス)
・ 科名:キンポウゲ科
・ 原産地:中国〜日本
・開花時期:5月〜7月(初夏)
・花言葉:精神の美、旅人の喜び

「鉄線」という名前は、蔓(つる)が鉄線のように強くてしなやかであることから付けられたとされます。漢字のイメージからも、繊細さの中に芯の強さを感じさせる花です。

花の特徴として、形は星形、または風車のような放射状。5〜8枚の花弁(実際は萼片)を持つ。
色は紫、白、薄紅、青、絞り模様など多彩。
他の植物や構造物に絡まりながら伸びて、細くても丈夫で、鉄のようにしなやかです。

〇鉄線とクレマチスの違い

鉄線と似た花にクレマチスという花があります。

どう違うのか?と思いますが、実は「鉄線」は、クレマチスの一品種です。日本では古くから栽培されてきた種類で、ヨーロッパで品種改良された豪華なクレマチスに比べて、より素朴で優美な印象があります。

・ 鉄線:細身でシンプルな花。日本の伝統的な風情。
・クレマチス(洋種):豪華で大輪、園芸品種が多い。

といった風です。
和菓子として表現するなら、ぜひとも日本の伝統的なお花を表現したいですよね。


鉄線の花はこのようなものになります。

鉄線の花の写真

これは青色の鉄線になりますね。


さて、では練切で『鉄線』を作っていきましょう。
今回の『鉄線』は紫色を基調とした6弁の形に成形していきます。

まずは練切を紫色に着色していきます。

今回は総ボカシという方法で作ろうと思いますので、色は思ったよりも濃いめに着色します。

鉄線用に紫に着色した練切

中のあんこ(中餡)は黄味餡を使用します。
黄味餡は白あんに卵の黄身を加えたもので、黄色く仕上がり、卵の風味がするのが特徴です。
あんこが暗い色だと透けて見えたときにその暗さが出やすいので、ヘラ目を入れるお菓子はなるべく色味の薄いあんこを使用します。
ただし、卵を使用しておりますので卵アレルギーの方への注意も必要です。

鉄線用の黄味餡

さて、総ボカシをしていきます。言葉通り全てをぼかす。という意味です。
白い練切を伸ばして、

鉄線用に薄く伸ばした白い練切

先ほど着色した紫の練切を包みます。

鉄線の白練切で紫練切を包む

この時点では、また表面は白さが勝っていますね。

鉄線の白練切で紫練切を包んだ後

そして白で紫を包んだ練切を伸ばして、黄味餡(中餡)を包みます。

鉄線の練切で中餡を包む
鉄線の練切で中餡を包んだあと

このように2度包餡する(あんこを包む)ことによって、表面の白さは先ほどに比べて薄くなり、表面には淡く下地の紫が出てくるようになりました。
これであんこを包む過程は終了です。次々包んでいきましょう。

次々と包餡された鉄線

次に形を作っていきます。
まずは平板と呼ばれる木製の平たい板に練切を打ち付けていきます。
こうすることによって、表面が平らになり、鉄線を作るための花びら(花弁)を表現するためのキャンバスが出来上がります。

平板に打ち付けてる鉄線
平板で表面が平らになった鉄線

周りの部分を揉み上げて、腰高の形にもっていきます。
少し写真ではわかりづらいかな。

周りを揉み上げた鉄線

そして、ヘラで形を作ります。今回はこちらの三角ベラを使います。
三角の角の部分を使って線を入れていく道具です。

鉄線に使う三角ヘラ

6弁を作るための真ん中に軽くしるしをつけておきます。

鉄線の真ん中に点をつける

ヘラはこの真ん中のしるしに向かって、外側から入れていきます。
綺麗な6等分になるように幅間隔に気を付けていきます。

鉄線に6等分に線を入れる

ヘラを入れるときは一思いに。迷ったらぶれます。

花弁の形を整えます。両手を使って花びらを表現していきます。

鉄線の花弁の形を作る

花弁に模様をつけていきます。
中心から花弁の先に向かって、スッと線をつけていきます。

鉄線の花弁に模様をいれる

ここまでくると形は完成です。花の鉄線に似ていますでしょうか?


しべをつけていきましょう。
絹ごしフルイを使って、

絹ぎしふるい

白の練切をこしだします。

絹ごしふるいで白練切を濾しだす

まずは、白のしべをちょんちょんと。

鉄線に白の練切のしべをつける

続いて黄色の練切をこしだして、白のしべの中心につけます。

鉄線に黄色のしべもつける

完成です。

完成形の上生の鉄線
上生菓子鉄線

いかがでしょうか?

鉄線は様々な色があります。

今回は総ボカシで紫色を淡く表現しましたが、紫の色味を強く出すこともできますし、白や薄紅の鉄線もステキですよね。


今回は練切で『鉄線』を作りました。
他にも様々な材質(お菓子の種類)で表現することもできるので、また別の機会に。

そして、ぜひお抹茶や煎茶と一緒に季節を感じながら、ホッと一息。どうぞ召し上がってください。

そんな私の作るお菓子が食べられるお店は富山県南砺市にある朝山精華堂というお店になります。
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