こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『金木犀』を作りました。
どこからともなく香る秋のしるし 上生菓子『金木犀』の懐かしい香り
秋が深まり、急に涼しくなったなと感じる頃。街を歩いていると、ふいにフワッと甘く、懐かしい香りが漂ってきませんか? そう、あれこそが「金木犀(きんもくせい)」の香りです。
小さなオレンジ色の花なのに、こんなにも辺り一面を香りで満たしてしまうなんて、本当にすごい力ですよね!
私は、この香りを嗅ぐと、なぜか昔の記憶が蘇ってくるような気がして、毎年楽しみにしています。今回は、そんな「香る秋」を、上生菓子の練り切りで表現してみました!
菓名は、もちろん『金木犀』です。
きんとん餡を使って表現する「葉と花のコントラスト」
この『金木犀』は、きんとん餡を使ってきんとん製で仕上げています。
まずは粒あんで芯を作り、それにこしだしたきんとん餡を箸を使って植え付けていきます。
きんとんは金木犀の葉の色をイメージしています。
このきんとんは、全体的にふわっと盛り付けることで、木々の茂みや、秋の冷たい空気感を表現しました。
そして、一番の主役が、この「小さな花々」です。
練切をオレンジ色(濃い目の黄色)に染めて、それを裏ごしふるいでこしだし、緑のきんとんの上に植え付けていきます。
このオレンジ色の細かい練切が、金木犀の愛らしい花が密集して咲いている様子を表現しています。
緑の中にオレンジが映える、このコントラストが、和菓子に華やかさと季節感を与えてくれます。
つぶあんの「素朴な甘さ」が香りを引き立てる
菓名札にある通り、この『金木犀』の中身はつぶあんを使っています。
金木犀の香りが、どこか素朴で落ち着いた甘さを連想させるように、この和菓子では、つぶあんの持つ小豆の風味豊かな、優しい甘さを選びました。
きんとんあんの繊細な舌触り、そしてつぶあんのじんわりとした甘さが合わさって、秋の満ち足りた幸福感を表現しています。

香りとともに味わう「ひととき」
金木犀の香りは、一瞬にして私たちを、懐かしい記憶や場所へ連れて行ってくれます。
この『金木犀』をいただくときは、ぜひ、お部屋を少しだけ涼しい空気にして。温かいほうじ茶や、玄米茶など、香ばしいお茶と合わせてみてください。お茶の香りと、お菓子の優しい甘さが、この季節の最高のハーモニーを奏でてくれます。
皆さんも、この『金木犀』で、秋の訪れの喜びと、心豊かな「ひととき」を過ごしてくださいね。

