【秋の上生菓子】糸菊(いとぎく)|練切・黄味あん

上生菓子糸菊完成 上生菓子

こんにちは、和菓子屋のあんまです。
今回は上生菓子で『糸菊』を作りました。
菊についても調べましたので一緒にご紹介します。

上生菓子

上生菓子とは、日本の伝統的な和菓子の一種で、特に茶道や季節の行事で用いられる主菓子です。
上生菓子では季節の花や生き物、風景などから季節を感じられる言葉を具現化して表現したものまで色んな種類の材質(お菓子の種類)で表現します。
その種類一つにとっても様々な表現方法があり、職人の技術がお菓子として見られるのも特徴です。

今回の『糸菊』は練切(ねりきり)製です。

練切(ねりきり)

練切とは、あんこに餅や芋などのつなぎを加えて、のびやすく作業性のあるあんこで、繊細でデザイン性のあるお菓子が作れることが特徴です。
白餡に餅や芋を加えるとより白くあがり、着色をして様々な色を表現できることも特徴です。

練切の作り方はこちらをお読みください。


日本の秋を彩る「菊」:その奥深い魅力と文化的背景

「菊」は、日本人にとって非常に身近でありながら、どこか背筋が伸びるような格調高さを併せ持つ花です。それでは、菊が持つ豊かな表情や物語について調べてみました。

1.薬草として伝来した「不老長寿」のシンボル

菊の原産地は中国で、日本には奈良時代から平安時代初期にかけて伝わったとされています。もともとは観賞用としてだけでなく、「不老長寿の薬草」として重宝されていました。

旧暦の9月9日は「重陽(ちょうよう)の節句」と呼ばれ、菊の花を浮かべた「菊酒」を飲んだり、菊に綿をかぶせてその露と香りを移した「菊の綿(きくのわた)」で体を拭うことで、無病息災や長寿を願う風習がありました。この邪気を払い命を延ばすという観念が、菊を「もっとも高貴で縁起の良い花」として定着させたのです。

重陽の節句についてはこちらにまとめてあります。

和菓子の世界では着せ綿という菓名でのお菓子が存在します。

2. 皇室の紋章と「高潔」の花言葉

菊は、その清らかで凛とした佇まいから「高潔」「高貴」「純情」といった花言葉を持っています。鎌倉時代後期の鳥羽上皇が菊の意匠を大変好まれ、自身の印として用いたことから皇室の紋章(十六八重表菊)となり、名実ともに日本を象徴する花となりました。

秋の静けさの中で、他の花々が散った後も気高く咲き誇るその姿は、昔から人々に「凛とした美しさ」を感じさせてきたのですね。

3. 変化に富んだ菊の「かたち」

江戸時代に入ると、平和な世の中で園芸技術が飛躍的に発展し、日本独自の品種改良が目覚ましく進みました。これが、いわゆる「伝統菊花」や「古典菊」と呼ばれるものです。

  • 厚物(あつもの): 大輪の花弁が中心に向かってこんもりと盛り上がる、重厚感のある菊。
  • 管物(くだもの・糸菊): 花弁が細い管状(糸状)に伸び、先端が軽くカールする繊細な菊。
  • 伊勢菊・江戸菊・美濃菊など: 咲き進むにつれて花弁が変化したり、うねったりする個性的で情熱的な菊。

和菓子の世界でも、この「かたち」の違いによって表現方法や雰囲気が全く変わるのが面白いところです。

今回は乱れた菊の花びらをイメージして、上生菓子は「糸菊」としてみました。


上生菓子で『糸菊』を作ってみた!

では練切を使って『糸菊』を作っていきます。

まず練切はピンクの練切と白の練切を用意します。

乱菊用のピンク練切
白練切

中餡は黄味あんを使います。
黄味あんの炊き方はこちらから。

まずはピンクの練切に白の練切を少し取り、ぼかしていきます。

糸菊のピンク練切
糸菊のピンク練練切に白練切をぼかす
糸菊のピンク練練切に白練切をぼかす2

きれいにぼかせたら、中あんの黄味あんを包みます。

糸菊の中あんを包餡する

きれいに包めました。
表面の一部が薄くぼけています。

包餡し終わった糸菊

包み終わったら形をお山の形に成形します。この時にぼかした部分がお山の頂点に来るようにして成形します。

糸菊をお山の形に成形する

次に三角ベラを使って細かく線を入れていきます。
この一つ一つの線が糸菊の花びらになります。

糸菊の細かい線を入れる

最後に黄色に着色した練切を用意して、

乱菊のしべ用の黄色練切

真ん中にしべを押して、

しべを押した糸菊

完成です。

上生菓子糸菊完成
上生菓子糸菊完成2

繊細な美を慈しむ「ひととき」

今回は上生菓子で『糸菊』を作りました。

細かい花びらを表現するために線をたくさんいれていきますが、この線の幅がとても大事です。ガタガタの線の厚みだと、きれいに表現できなくなるからです。
細かく一定に入れていくのも職人の技術ですね。

朝晩の冷え込みが増し、いよいよ冬の足音が聞こえ始めるこの季節。
この『糸菊』をいただくときは、ぜひ温かいお抹茶や、少し渋みのある上質な深蒸し煎茶を淹れてみてください。温かいお茶と繊細に作った『糸菊』を囲んで、繊細な美を慈しむ「ひととき」を過ごしてみてくださいね。

その他にも季節に合わせて様々な上生菓子を作っています。
ぜひご覧になってお菓子で季節を楽しんでみてくださいね!


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